「Angel Beats!」都合のいい展開 全てはゆりのため?

Angel Beats!」7話を受けての感想。前回のkeyコーヒーの解釈と、あまりに都合のいい展開についての話です。

やはりkeyコーヒーはゆりの世界観を受け入れることの象徴なのか

keyコーヒーの解釈は、どうやら7話でも応用できそうです。






屋上でゆりから手渡された缶コーヒーを思慮深く眺め、

音無「俺は弱いな。お前の強さが改めて分かった。」
ゆり「そんなことないわ…。それで何か変わった?」「気持ちよ。これからも戦線に居続けるの?」
音無「居続けるよ。このままじゃ死に切れねえし。」
ゆり「そう。あなたにも目的が生まれたって訳ね。」
音無「改めてよろしく。」

のやりとりの後に缶コーヒーを飲むので、生前の記憶を取り戻した音無が自身の人生を「やりきれない」と感じ、一度は捨てた「ゆりのステージ」に改めて戻ってきたという感じでしょうか。keyコーヒーの扱いは今後も注目してみてもいいかもしれませんね。

あまりに都合のいい展開は誰のため?

さて、ここからがこの投稿の本題。このアニメを見ていて多くの方が感じているのが「都合のいい展開が多すぎる」というものだと思います。私もその一人です。

では、都合のいい展開は一体誰の為に用意されたものなのか(制作陣という回答はここではナシで)。この都合のいい展開は誰に恩恵をもたらしているかを考えると、それはゆりにとってでは?と思えるわけです。

  • SSSのメンバー
    • 彼女の手となり足となり動いてくれる。
  • メンバーが不足している
    • 音無がSSSに加わり、当初は疑いがあったもののギルド降下作戦などを経ることにより彼女への信頼を深める。
  • 天使のPCから情報を盗み出したい
    • 竹山(クライストとお呼びください)が戦線の主要メンバーに加わる。
  • 武器を持たず反乱を起こした場合、天使がどう動くか検証したい
    • 天使の登場。
  • 天使を陥れるためにテストで赤点を取らせ、その名誉を失墜させると共に変化を起こしたい
    • 天使が生徒会長の座を追われる。
  • 記憶喪失である音無の成長と自律的な考えからの決別
    • 直井をSSSに引き入れるのに一役買う。
  • 仲間に加わった直井
    • 超能力の持ち主で、音無の記憶を取り戻させる。
  • 記憶を取り戻した音無
    • 自身の人生を「やりきれない」と感じ、改めてゆりと行動することを決意。

ざっと書き出すだけでも、実にゆりにとって都合のいい展開が用意されているのが分かると思います。ひょっとしたらここに、陽動に向かないバラードを新曲として持ってきた岩沢の成仏を加えてもいいのかもしれません。


7話で印象的な場面があったので参照してみましょう。





音無が連れてきた天使が川の主を釣り上げる場面です。SSSのメンバーはもう必死で、天使とかどうでもよくなっちゃってますね。
その直前のゆりのカットです。意味深な顔をしてます。「は?お前らなに天使の味方してんの。」と言わんばかりです。
で、(分身の?)天使にやられちゃう訳です。


もしかして、ゆりの自作自演か実は凄いかまってちゃんなんじゃなかろうか、そんな事すら感じさせる流れですよね。かまってちゃんは冗談にしても、上記した「ゆりにとって都合のいい展開」を考えてみると、ここから連想し得るのが「死後の世界=ゆりの思い通りにいく世界」なんじゃないだろうかというものです。しかし、それが彼女の力によるものなのか、はたまた偶然なのか現時点では判断できません。その可能性をちょっと視点を変えて検証してみましょう。参照するのは、死後の世界でそれぞれが発揮している力です。

  • 岩沢:声を失う → 歌で人を集める
  • 日向:凡フライを落球しチームに迷惑をかける → 新入りの音無を快く受け入れる
  • 直井:自己暗示 → 他人に催眠術をかける

絶対的な数が少ないのでなんとも判断しづらいところではありますが、どうも生前自分にかけられていた制約(=人生の未練)が、死後の世界での他人への影響力と対応しているような気がしてきます。つまり、

  • 「自分」自身の人生への未練 → 死後の世界での「他人」への影響力

のように対応しているかのように捉えることが出来るのではないか、ということです。事実、生前の未練に囚われた人々の集まりなので、無意識的に他人にそう振舞ってしまうのかもしれませんが。ただ、それに拘るあまりその影響力に満足してしまうと岩沢の様に成仏してしまうので、力についてはある程度無自覚であるのが理想的な状況なのでしょう。
では、そう仮定してゆりの場合を考えて見ましょう。

  • ゆり:人(この場合強盗)が望んでいるものを持っていけなかった → 他人が自分の思うように動いてくれる

妹弟を強盗に殺害された過去が、その後も彼女の人生を制約したのかは現時点で判断が付きませんが、どうやら公式に当てはめることが出来そうです。何となく「死後の世界=ゆりの思い通りにいく世界」が行けそうな気がしますね。という訳でここでは、物語の都合のいい展開は、死後の世界がゆりの思い通りになる世界だからという事にしておきましょう。


そんな思い通りに行く世界でもイレギュラーな存在がいます。音無天使です。
天使については謎が多すぎるし、超展開が起こっていて全てが憶測の域を出ないのでここでは触れません。天使について書いている方は沢山いらっしゃるでしょうから、そちらをご覧ください。少なくとも「どうやら天使はゆりの思い通りにならない人物らしい」ってことは皆さんも感じていることと思います。ひょっとしたら、ゆりのために用意された存在なのかもしれませんね。
問題は音無です。彼は屋上でkeyコーヒーを受け取って飲み、ゆりのステージで生きる決意を改めてしました。それこそ、過去に居たであろう記憶喪失者と同じで人生の理不尽さを呪って、ゆりと共に神に抗おうとしたわけです。彼が記憶喪失であるが故、あの世界で成長し獲得していった自律的な考えは直井を仲間に迎えるためにゆりに利用され、その直井の超能力で記憶を取り戻し疑問を捨て去ってゆりと共に行動する彼には主人公である特別性が無いのかと思われました。
しかし、音無にはちょっと違うところがあった。それが、釣りに天使を連れて来たという所です。今のところ、彼が主人公足りえる理由はその点位でしょうか。些細な事のように思われますが、死後の世界がゆりの思い通りにいく世界であると仮定するならこれは重大なイレギュラー要素ですよね。




では、音無が何故こんな行動をするのか、彼の死後の世界で発揮する力を考えることで検証してみましょう。
音無はただ病弱な妹のためだけにその人生を送っていました。妹の死によって生きる目的を失った彼は、退院する少女を目撃することで更正し、医者つまり他人の役に立つための人生を送ろうと決意し、その矢先に事故に遭い死んでしまう。つまり、

  • 決意した夢を叶えることが出来なかった → ???

になるでしょうか。
これを公式に当てはめると音無が死後の世界で持つ力は「他人の夢を叶えること」になるかと思われます。
しかし、どうでしょう。死後の世界で夢を叶えるというのは、生前の未練を果たすのと同義なはずです。つまり、彼が力を行使したなら相手は成仏することになってしまうのです。それこそ、まるで広義の天使の役割のようですよね。(完全に与太ですが、音無を演じている神谷さんはマクロスFでミハエルを演じ、ガンダム00でも天使の名を冠したモビルスーツに乗ってますね。)
もうひとつ可能性を挙げると、

  • 誰かの為に自分の命を費やしたい → ???

というのもあるかもしれません。この場合だと、死後の世界の力は「自分の為に誰かが命を賭してくれる」ってことになるんですかね。成仏の条件は、文字通り誰かの為に体を張るってことになるでしょうか。なんだか物語の結末が見えてきそうです。
前者が記憶を取り戻した直後のセリフで、後者は生前の音無の決意のモノローグです。どうも可能性としては前者の方が高そうですが、「人を成仏させる」か「自分が成仏する」かのどちらにせよこの辺りと、天使を連れて来るなど完全にゆりに従っているわけではない点、これが彼の主人公としての特別性といったところになるでしょうか。

今後に向けて

今後、無自覚であるにせよ自分の思い通りになる世界で「神」の如く振舞うゆりに音無と立華奏という二人の「天使」が歯向かい、ゆりが「世界が自分に都合よく動くように出来ている」ことに気が付くみたいな展開になると面白いですね。だとすれば、ここまでのあまりに都合のいい展開も何とか説明の付くものになると思います(でも、この設定どこかで見たことある気が…)。
いかにも凶悪そうな赤目の堕天使も登場しましたし、それも求心力を失ったゆりの為に用意され登場したとも捉えることができるんですが。そもそも、音無の記憶が本物なのかも分かりません。直井からのプレゼントなのかもしれないですし(あれ、これも…)。天使の役割も「ゆりの思い通りにいく世界」を前提にすれば自ずと分かってくるかと。
とにかく今後どんな展開になるかは全く分かりませんが。


思い通りに進まない作品に視聴後はやきもきさせられていますが、それぞれのスタンスや見方で楽しめる作品ではあるんだろうなと思います。現に、別に鍵っ子でも麻枝信者でもない自分も楽しめてますし。

私の目下の関心は「音無マジ天使!それとkeyコーヒー。」って感じです。


【追記】
この記事も、当然前回のエントリーを踏まえたものです。
音無がとるイレギュラーな行動は、彼があの世界で成長したからに他なりません。「獲得したものを捨て去った」が誤解を生むかなと思ったので補足です。
自分の過去を知り、それでもいいと自分自身を受け入れる様は、あの世界において「自我同一性」を獲得したとも言えるかもしれませんね。自分が自分であることを受け入れたといった所でしょうか。
「壮年期」に突入したと断言は出来ないですが、過去を受け入れた上でゆりと共に行動していくのを決断し、それでも自律的な判断で天使と親交を深めたりしていますので、順調に成長しているといえると思います。ゆりが経営するSSSに就職したって感じでしょうか。あまり独善的だと転職しちゃう可能性があるよ、という認識です。